ダイカスト金型の基本的な構造と主要各部の特徴と役割、構造によるダイカスト金型の分類について紹介しています。ダイカスト金型がどのような仕組みになっているのか、どのようなタイプがあるのか、基本的なところを学んでおきましょう。
「固定型」と「可動型」から構成されるダイカスト金型。固定型と可動型はそれぞれ、主型・入子と呼ばれる部品から成り、必要に応じて中子と呼ばれる追加部品が使用されます。
固定型と可動型の2つを組み合わせて作られるキャビティ(空洞部)に溶湯(高熱で溶かした金属)を流し込み、瞬時に冷やし固めて成形するのがダイカスト鋳造のしくみです。
ダイカスト金型は大きく2つの機能を持ちます。一つは製品形状の付与、もう一つは熱抽出。いずれもダイカスト製品のクオリティと完成度を左右する重要な機能です。
続いては、主要部品の役割と特徴を説明します。
おも型は、入子をはめ込むための枠部分を構成する主要部品の一つです。固定部と可動部の両方のキャビティ部分を支える金型のベースとして、入子の型を保持する役割を担います。使用されている材質は、炭素鋼・鋳鉄・鋳鋼などです。
おも型は、固定型・可動型のどちらにもあり、固定型にあるものを「固定おも型」、可動型にあるものを「可動おも型」と呼びます。
また、おも型の表記には、「母型」、「主型」などもあります。一般的には主型と表記されることが多いようです。
入子は、おも型の中でキャビティ(空洞)部分を形成するパーツです。高熱の溶湯金属と接することになるため、材質は熱間工具鋼など耐熱性に優れたものが使用されています。
入子はそれ単体での役割を担いますが、入子の中に「埋子」をはめ込むことも。外観や寸法を重視する部位、型の損傷が起きやすい部位などを、交換できるようにするためです。また、金型の耐久性を上げる目的で、入子の表面には窒化処理などの表面処理も行われています。
他にも、キャビティ部分を一体で製造するのが難しい場合や金型にガス抜きを付ける場合、金型の劣化に際してキャビティを部分的に交換する場合など、入子の用例は多岐に渡ります。
中子は中空部分のある製品を成形するときや、製品部にアンダーカット部分がある場合に使用する追加部品の一つです。「引き抜き中子」「置中子」などの方法があり、いずれも中空部分を形成させるため、鋳型の中に配置して使用します。
材質はシェルモールドやコールドボックス、CO2、フランなど、砂を樹脂で硬化させたものが用いられるのが一般的。中子の基本的な役割である中空部分の形成については、竹輪やパイプをイメージするとわかりやすいでしょう。
ダイカスト金型は、構造的な特徴によって4つのタイプに分類することができます。すなわち、「直彫り金型」「入子型」「共通おも型」「ユニット入子」です。ここでは、それぞれの特徴やメリット・デメリット、用例などについて説明します。
直彫り金型はおも型へのキャビティおよびランナー・オーバーフロー等を直接彫り込むことができる金型。複雑形状への対応や工期短縮などのメリットがあります。一方、大きな金型では熱処理ひずみが大きい、寸法精度を確保するのが難しい、金型温度制度も難しいといった点がデメリット。その特性から、直彫り金型は主にダイカストマシンの金型や、生産数が限定されている短納期の金型に用いられています。使用範囲が限定されているのが特徴です。
入子型は現在広く使用されているスタンダードなタイプの金型です。おも型の中にキャビティ、ランナー、ゲート、オーバーフローなどを彫り込んだ入子をはめ込む構造になっています。一番の特徴は、おも型の中にはめ込んだ入子を分割できること。入子の分割により、金型の損傷部分だけを部品交換したり、大物型の場合は入子の熱処理変形を防止できるといったメリットがあります。歩留まりや加工性にも優れているのも入子型の特徴です。
共通おも型は、入子型のバリエーションの一つです。はめ合い寸法を統一した1個のおも型において、キャビティの異なる複数の入子が共存するという構造になっています。大量生産に用いられることは少なく、試作段階や小ロットの生産に使用されることの多い構造です。
ユニット入子は複数の入子がおも型の中に共存している構造の金型です。おも型に付属するそれぞれの入子は、どれもはめ合い寸法が同一。おも型自体もダイカストマシンに取り付けたままにし、それぞれにガイドピン、押出機構、冷却管を持つ入子型を短時間で入れ替える方式をとります。入子型の変種といえますが、入子を単体ではなく複数付属させているのが特徴です。